転職した際、雇用保険の加入手続きに関して気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は、雇用保険の加入条件や手続きの方法について解説していきます。
この記事で学べること
- 雇用保険について
- 雇用保険加入手続きに必要な書類とは?
- 雇用保険の加入手続きが行える条件とは?
- 雇用保険加入手続きができない働き方とは?
- 雇用保険の加入手続きをするメリットとは?
- 教育訓練給付金について
雇用保険ってハローワークでよく聞きますが、手続きとかよくわかりません。


今回は、雇用保険の加入条件や手続きの方法について解説していきます。
雇用保険の加入と手続き方法
雇用保険の加入と手続き方法について解説していきます。
雇用保険
雇用保険とは日本政府が統括する制度で、失業後から再就職までの生活を支える公的保険のこと。退職後も経済的に困ることなく、安心して就職活動を行えるようにするものです。
労働者を雇用する事業主は、基本的に雇用保険の加入義務があります。給付条件や受給するまでの期間は、人によって異なるのが一般的です。
雇用保険加入手続きに必要な書類
ここでは、雇用保険の加入手続きに必要な書類と、手元にない場合の流れをご紹介します。
雇用保険被保険者証
雇用保険の加入手続きには、「雇用保険被保険者証」が必要です。基本的に会社が保管しているものであり、退職する際に手渡されます。退職するまでは、ほぼ目にすることがないものです。
雇用保険被保険者証には、以下の内容が記載されています。
- 被保険者番号
- 氏名
- 生年月日
- 資格取得日
- 事業所名
被保険者番号は、一人に対して1つ与えられます。雇用保険は再就職先でも引き継がれるため、雇用保険被保険者証は、転職時の入社手続きに必要な書類です。
離職票と混同されやすい書類ですが、離職票は退職したことを証明するためのもの。転職先に提出する必要はありません。
雇用保険被保険者証が手元にない場合
雇用保険被保険者証を紛失してしまい手元にない場合、管轄内のハローワークで再発行の手続きをする必要があります。
再発行に必要な物は、「本人確認書類」「前職の社名や所在地が載っているもの」「自分の印鑑」などです。
申請すれば、当日中に再発行されます。ただし、ハローワークによって可能な時間は異なるので、事前に確認しておきましょう。
また、再発行は郵送やインターネットによる電子申請でも手続きできます。
退職した会社から受け取っていない場合は、職場に問い合わせてください。
雇用側が準備する書類は複数ある
会社側が雇用保険の加入手続きをするには、下記に挙げた複数の書類が必要になります。
企業側が準備に必要な書類
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者証・労働保険関係成立届の控え
- 被保険者資格取得届
- 開業届、営業許可証
- 法人登記簿謄本もしくは登記事項証明書
- 雇入通知書、雇用契約書
- 建物登記簿謄本または賃貸借契約書
- 出勤簿やタイムカード
- 労働者名簿
- 賃金台帳
上記のように従業員の雇用保険加入にあたって事業主が準備する書類は多く、そろっていないと正しく手続きがされません。手続きは、従業員を雇用した翌日から10日以内に行う必要があります。
雇用保険の加入手続きが行える条件
雇用保険の加入は、どのような働き方でも可能なものではなく一定の条件があります。勤務時間や期間の長さが関係しており、基本的に正規雇用であれば加入できるものです。
雇用主は業態形態問わず、該当する従業員を加入する義務が発生します。
1週間の所定労働時間が20時間以上
1周間の労働時間が20時間以上という条件があります。当てはまっていれば、派遣社員や契約社員、アルバイトも加入対象です。
ただし、繁忙期や特定の週のみ労働時間が長いことで、「契約時間を越して週に20時間以上勤務した」という場合は、対象外になることが多いでしょう。
31日以上の雇用見込みがある
雇用期間に定めがなく、31日以上の雇用契約見込みが必要です。31日未満の場合は加入できず、事業主も手続きの必要がありません。
日雇労働者は「同じ職場で31日以上勤務している」「2カ月継続して18日以上働く」といった条件が整っていれば、日雇労働被保険者として雇用保険に加入できます。
学生ではない
基本的に学生は、どのような職場であっても雇用保険の加入手続きはできません。
学生は「学業」が本分であるため一般的な労働者とみなされず、退職後に失業保険を受け取る立場にないと判断されているからです。
そのため、どんなに勤務時間や期間の長いアルバイトをしていても、雇用保険には入れません。
ただし、「通信教育・定時制・夜間の学生である」「卒業見込み証明書があり卒業前から卒業後までも同じ職場で勤務する」という人は、雇用保険加入の対象になります。
雇用保険の加入条件に関しては、「雇用保険ってなに?加入対象者と適用除外者の違い」でもお伝えしているのでご確認ください。
雇用保険加入手続きができない働き方
雇用保険は条件に合えば入れますが、以下のような場合は手続きできません。「労働者とみなされるか」が重要なポイントなので、転職後に働き方が変わる方はチェックしましょう。
個人事業主
自身で事業を行っている人は「労働者」に該当しないため、雇用保険には加入できません。自身が事業主として従業員を雇った場合は、雇用保険の加入手続きを行う必要があります。
業務委託契約
特定の企業に所属しない業務委託契約は、雇用契約を結んでいないため、雇用保険の加入対象外です。
ただし、委託する企業側から労働時間や期間などの指示があり、条件に合致すれば労働者と判断され、雇用保険に加入できる可能性があります。
上記どちらの場合も、副業で雇用保険の条件に合ったアルバイトやパートなどをしていれば、加入は可能です。
一方、契約社員や派遣社員として働いて雇用保険に加入していた場合でも、会社側から業務委託契約に切り替えられた場合は、対象外になることが多いので注意しましょう。
雇用保険の加入手続きをする3つのメリット
雇用保険の加入には、「退職後に安定した生活を送れる」というメリットがありますが、この項目ではその他のメリットにも触れていきます。
失業保険が受けられる
雇用保険に加入していると退職後に失業保険を受けられ、安定した状態で求職活動ができます。失業後は毎月あった収入が途絶え、経済的に不安定になりやすいもの。
仕事を探しても、すぐに決まるとは限りません。
失業給付があれば、ある程度の期間は安心して暮らせるでしょう。
失業保険の受給資格は、「雇用保険の加入期間が12カ月以上ある」「ハローワークにて失業保険受給の手続きを行っている」「就職の意思があり求職活動をしている」の3つ。
妊娠中や出産を控えている人は基本的に「すぐに働ける状況ではない」とみなされ、失業保険を受けられません。その場合は、最大で3年間受給期間を延長することが可能です。
失業保険の給付額は、前職の給与額で決定します。1日分の支給額は、離職前6カ月の賃金合計÷180です。
給付期間は雇用保険の加入期間や自身の年齢、退職理由によって差があり、90日から330日までになります。
再就職手当が受けられる
失業給付期間が3分の1以上ある状態で新しい仕事が決まると、再就職手当を受けられます。
再就職手当の申請を行えば、受給期間の残りが3分の1以上は支給残額の60%、残りが3分の2以上は70%相当の金額が一回で支給されます。
再就職手当を受ける条件はいくつかあり、下記のとおりです。
再就職手当を受ける条件
- 申請手続き後、7日間の待期期間満了後に就職している
- 1年以上の勤務が確定している
- 離職前の事業主に再雇用されたものでない
- 懲戒解雇や自己都合退職などで給付制限がある場合は、待期期間満了後の1カ月間は、ハローワークもしくは認定された職業紹介事業者の紹介による就職に限る
- 失業給付の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある
- 過去3年以内に再就職手当を受けていない
- 受給資格が決まる前に内定していた就職先ではない
- 雇用保険の被保険者要件を満たしている
- 再就職手当の支給決定の日までに退職していない
上記の条件に該当しない場合、再就職手当の代わりに就業手当を支給されることがあります。事前に自身が対象になるか確認しておきましょう。
教育訓練給付金が受けられる
雇用保険に加入していると、国が指定した教育訓練講座の受講時に費用の一部が負担されます。
退職後、経済的に不安なく「スキルを身につけたい」「資格を取りたい」といった方に適した制度といえるでしょう。
条件は、「受講開始日に被保険者ではない」「初めての受給の場合は同じ企業に1年以上勤めていた」「退職日の翌日から1年以内に受講を開始すること」です。
また、給付金を受けた経験がある人は、前回から3年以上経っていることも条件。講座には、簿記・介護・英語検定・税理士・Webデザインといったさまざまな種類があります。
自身に合った仕事を探すには、安定した生活を維持することが大切です。雇用保険に加入手続きをすることで、転職活動を充実させられるでしょう。
退職後の手続きや再就職に向けて不安を感じる方は、第三者の手を借りるのも一つの手段です。